GRAY WOLF
HERMES社のBIRKINバッグは一個100万円以上する高級品。ペイントするにあたって、実際に触れながら細部を観察するとまさに、デザインと素材と技術が絶妙のバランスで支えあう完璧な商品なのがよくわかります。
普通バッグは裏返した状態でミシンをかけてまとめてからひっくり返すんだけど、エルメスは絶対裏返せない。と言う事は、一体全体職人さんはどうやってこれをまとめあげるのか全然分からないのです。一見普通に見えるハンドル(持ち手)の付け根だって、指1本入らないような隙間の奥まで太い糸で均一にしっかり縫い付けられていて、下手なアウトドアブランドのバッグよりよほど頑丈な作り。なのにとても柔らかい牛皮を使っていて、無造作にポンと置いてもシャンと立ってへたり込まない倒れない。ほんとにすごいバッグです。もちろん内側まで同じクオリティーで同じ色。そういう訳で、バッグの内側には手を出せないし、折角の凝った色なので、ここはHERMESに敬意を評してベース色を生かしたペイントを考えましょう…だけどこれが難儀なのよね。
先にやった黒ヒョウは強いて言えば青なんだけど、「セルリアンブルーの印象があるものの、ほんの少しの緑味と上品な濁りのある青」といった感じ。そして今回は、「ラピスラズリというか生の顔料のコバルトブルーの様な鮮やかさを保ったまま深い暗闇に潜む青」…とでも申しましょうか。まあ一言で言えば難しい色なんです。とくに今回の暗闇のコバルト色は、対向色が決め辛い。明度的にも彩度的にも悩むことになります。
そこで、考えたのは灰色オオカミの毛皮仕様。ただし、毛皮だけでオオカミと分からせるのは難しいので、少し遊びを入れてモチーフでもコントラストを付けて行こうと言う作戦です。最終的に男性用というのがデザイン決定のポイントでした。
…と言う訳で制作プロセス動画です。
- 2014.08.23 Saturday
- 制作日記
- 02:48
- comments(1)
- trackbacks(0)
- -
- -
- by 倉科昌高